農業の発信力 Funaki Shohei 舩木 翔平*
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キーワード
農業,まちづくり,連携
目 次
1.はじめに
2.農業でまちづくり
3.SNSとニーズ
4.ヤギ牧場による発信
5.まとめ
1.はじめに
2012年に筆者が八王子で新規就農してから3年が経った。「農業で町を面白くしたい」と漠然とした目標を掲げる筆者が今に至るまで、多くの人たちの支えがあった。先ずは、堀之内で1,000㎡の畑とミツバチの巣箱が2つだけで始まり、東京農大の同級生や後輩らに手伝ってもらい取り組んだ。ハチミツの収穫体験のイベントなどを開催する際も多くの仲間たちの助けがあった。このハチミツ収穫体験イベントでは、Facebookで集客しただけで50人もの人が集まり、SNSの影響力を大変感じた。その後もFacebookやTwitterのSNSを中心に宣伝をしながら、多くの方々と知り合いになり、仲間も増えた。そして、2013年には、株式会社FIOを設立し、舩木・伊藤・大神を中心に新たなスタートを切った。2014年には、更にFIOのメンバーが増えていった。
2.農業でまちづくり
株式会社FIOは、「農業でまちづくり」をテーマに『地域社会の為に地域の一員として持続可能な社会を創造する』を理念に掲げ、「地域産業の創造」「接した全ての人が幸せを感じる地域づくり」「地域の自立による社会の発展」の3つの事を目的とした。この目的を達成するために以下の事を実行することを決めた。「農家は、日本に住む多くの人達の食料を作る者として、「農業という第一次産業を守らなければいけない」という使命を持っています。その為、持続的な運営ができる仕組みを整える必要があります。農業から地域産業が発展し「農業が若者から憧れる職業」となり、地域の方々が関わり、そして繋がり、皆が幸せを感じる「地域」をつくっていきます。」これは、農業に関わるFIOだからこそ出来ることであり、今の日本に必要なものであると考え取り組んでいる。
3.SNSとニーズ
FIO設立当初からSNSだけでFIOの事や農業についてPRをしてきた。そのお陰で多くの方々発信することが可能になった。FIOの野菜を買って頂いた方、農業体験イベントに参加して頂いた方など、様々な人達とSNS上で繋がり、その後もお互いの投稿を見ながら情報を知ることができる。このような相互関係は、閉鎖的な空間ではあるが、互の信頼も保ちつつ新鮮な情報を発信することができる。この影響力は、ネット上の口コミである。しかし、SNSだけでは、消費者のニーズが掴みきれず「消費者が今何を求めているのか」「野菜の適正価格は」など分からないことが多くあった。そのため、思いつく商品・サービスを何でも実行しながら、FIOとして何を提供すれば良いのかを考えた。また、八王子や多摩のイベントに参加し、野菜を自ら販売をしながら、PRと地域の方々とのコミュニケーションを兼ねながら活動を続けた。インターネット上だけのPRでは、必ずしもFIOがターゲットとしている人たちへ伝わるものではないことが分かった。SNSの欠点としてもう一つある。それは、同じ考えの人達が集まりやすい点とFIOが拠点としている八王子市堀之内の身近なところへの発信ができていない点である。解決するために接点を作る方法を考えた。それが「ヤギ牧場」である。
4.ヤギ牧場による発信
「ヤギ牧場」の開設にあたっては、クラウドファンディングを活動し、資金集めとPRを兼ねて始めた。クラウドファンディングでは、掲載してすぐにインターネット新聞で取り上げ、その後、新聞社やラジオでも取り上げた。この影響力は大きく、一つメディアで紹介されるたびに10万円ほどの寄付が集まった。当初、25万円を目標にしていたものが最終的に45万円ほど集まる結果となった。この支援者の内訳をみると、多摩ニュータウン地域に住んでいる方たちからの寄付も多く見受けられた。これは、とても大きな成果だと感じた。身近に存在する「ヤギ牧場」に対して、意識をしてくれたことで目的の一つが達成された。その後、完成した「ヤギ牧場」の運営については、2015年の課題である。ヤギとの触れ合い、ヤギ乳の生産、ヤギ牧場に隣接して開設する体験農園の開園を予定している。
5.まとめ
2012年、筆者は一人の農家として始まった。生産者の農家としてだけなく、まちづくりや活性化する上で農家が必要であると考え、飲食店、百貨店、パン屋、NPO、大学など様々な企業や団体と取引・連携を行いながら、農業の新しい可能性について探っていった。これらの活動をHPやSNSを活用し、多くの人へ発信を行い「農業」という産業を今まで接点がなかった方々へ、より身近な存在へと近づけた。しかしながら、「生産者」という立場だけで取引・連携を行うのでは、弱くなりがちであった。それは、新規就農をして3年間で十分理解した。これからは、野菜を作れるだけの「生産者」ではいけない。野菜のことを一番よく知っているのは「生産者」であり、それを伝えられるのは「生産者」だ。それがより効果的に発信ができる場所が東京である。FIOが東京で農業をやる存在意義は、この発信力にある。今後もFIOは、農業という産業に挑戦し続けながら、魅力ある「まち」を創っていきたい。